(後編)地域コミュニティを豊かに。ヨウ・サプライが取り組む循環を生む野菜づくり
前編では、福岡県で代理店業を営む株式会社ヨウ・サプライの宮崎陽さんがサステナブルな取り組みを行うきっかけや、地域のつながりの大切さについてお話しました。後編では、地域のつながりが大切な理由や、私たちが気軽にできるアクション等について書いていきます。
★前編はこちら
地域コミュニティが大切な理由
私たちは陽さんが大切にする地域の方ともお話をさせてもらいました。向かったのは、収穫した野菜の提供先の一つであるご近所のNPO法人FLAPさん。
NPO法人FLAP(フラップ)
株式会社ヨウ・サプライの事務所から車で約10分の位置にある就労継続支援B型事業所 NPO法人FLAP(フラップ)。所長の宮浦 剛(みやうら ごう)さんはご兄弟で平成26年から事業を開始し、今年で8年目。18歳~67歳までの約20人が所属しており、ベーカリー部門としてパン屋、他にも公園運営に取り組まれています。
今回伺ったのはベーカリー部門。FLAPさんは地域密着型で、店舗でのパン販売のほかに、老人ホーム・保育園等約20施設に訪問販売を行っていたり、地域企業への協力としてイベント来客用プレゼントを制作したり、地域行事等にも出店するという積極的な営業をされています。
筆者は就労支援事業所といえば、イベントや店舗販売がメインという印象を持っていました。なぜ、積極的な営業を行うのでしょうか。
「パンの売り上げ収益をあげなければ、利益を均等に支援者へ還元することができないんです。利益をあげ続けるには、売り上げを伸ばさなければいけない。一方で限られた人数では、新規の営業活動等はなかなか難しい現状です」と宮浦さんは続けます。
「そんな中で昨今の材料費の高騰が利益に直撃。だからこそ、陽さんが作った野菜を無償提供してくれることが非常に助かるんです。パンの価格をあげることなく、商品バラエティを増やし、工夫した惣菜パン等も売ることができます。何よりも支援者に還元することができるのでありがたいです」
陽さんの地域に還元したいという気持ちと行動が、地域経済の循環の輪ができていることに改めて気づかされます。
FLAPさんのパンは早い時間に売り切れてしまうそうで、伺った日も既に完売していました。
陽さんとサステナブルを考える
昔と考え方が大きく変わったとお話ししていた陽さんご自身にとって、サステナブルとは何かお聞きしました。「昔は『残すことがかっこいい』と思っていた。今は、“消費できる必要な量を買う”、そして“一度買ったものは大切に使う”ことが自分にとってのサステナブルかな」と語ります。そして私たちに向けて、「自分にとっては身近な人の死がきっかけだった。その時に、当たり前の日常を疑うようになった。災害の経験も非日常で、同様かもしれない。人それぞれきっかけは違うかもしれないけど、普通に生活している日常を疑うことが、サステナブルを身近に考えられることではないかと思う」と伝えてくれました。
続けて、気軽にできるサステナブルなアクションを教えてくれました。
「家庭菜園などに興味を持っている人には『テラリウム』がおすすめ」と言って出てきたのは、ラップに覆われた金魚鉢に入った木。苔テラリウムとは、ガラス容器の中で苔を育てるもので、密閉されたガラス容器の中は、水分が循環するので毎日水やりしなくても植物(苔)を育てることができるそうです。
「金魚鉢とか器に木を入れてシュッシュと水をスプレーでかけると、苔ができてきて観賞用にも美しいものができるんよ」と言いながら見せてくれたのは、2体目として育成している苔テラリウム。中にある木は、7月の豪雨の時に畑に流れ着いた流木だそう。要らなくなったものをしっかり活用していることに驚きます。苔テラリウムがあれば、部屋の雰囲気も、気持ちも明るくなることは間違いなさそうです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、「自産」の野菜を地域コミュニティに提供する株式会社ヨウ・サプライの宮崎陽さん、そして野菜の提供先であるNPO法人FLAPさんにお話をお聞きしました。
私たちが自分で作った野菜を地域に提供することはなかなか難しいかもしれないですが、自分で野菜作りや植物を育てる楽しみを知ることや自分の住む町に興味を持ってみることはできそうです。様々な世代が集う場、ヨウ・サプライの事務所は、これからも地域の皆が安心して暮らせる心の拠り所のような存在になるだろうと感じました。