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A plus!久米さんが教えてくれた、美味しいだけじゃない!ジビエ料理から考える社会課題

皆さんは、ジビエ料理を食べたことはありますか?街でジビエを提供する飲食店もありますよね。「ジビエって何の肉?おいしいの?」「ジビエと社会課題って何の関係が?」そんな疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

今回CaNday編集部は、ジビエ料理を提供するビストロを訪ね、美味しい料理を食べながら、ジビエと社会課題のつながりについて学んできました。この記事を通じて、ジビエ料理をもっと身近に感じていただけたら嬉しいです。

自然とみんなが集まるお店「A plus!」の久米さんを訪ねてみた

今回お話を聞いたのは、横浜市青葉区でビストロ「A plus!(アプリュス)」を営む久米淑子さん。お店は東急田園都市線青葉台駅から十日市場方面に徒歩10分のロケーションにあります。駅前の喧騒から離れ、住宅街にひっそりと佇む隠れ家的ビストロです。

オーナーシェフの久米さんは、調理からホールまでを一人で切り盛りしています。もともと都内の某有名フレンチレストラン(ミシュラン星付き)でソムリエもしていた久米さん、料理の修業も十数年経験し独立したとのこと。なので、A plus!で出される料理やワインはシンプルですが本格派です。

A plus!を営む久米淑子さん

「A plus!の店名の由来はフランス語で『またね!』という意味。『また来るね!』とお客さまに言ってもらえるとうれしいですからね。また、お店のロゴと一緒に書いている『 la famille sympa(ラ・ファミーユ・サンパ)』はフランス語で“陽気な家族”という意味。A plus!に行けば楽しい一時が過ごせる、そう思って頂ける居心地の良いお店にしたいと思ってやってきました」と久米さん。

ロゴも久米さんの自作。ロゴの下には「La famille sympa(ラ・ファミーユ・サンパ)」

ドアを開けると、すぐに久米さんの元気な挨拶が聞こえます。明るい店内は優しい雰囲気で堅苦しさがなく、子連れや軽装でも全然問題なし。ワイン1杯だけ飲んで帰るというお客さまもいらっしゃるようです。近隣の方々だけでなく、遠くからも通ってくるお客さまがいるのも納得ですね。

安心で安全な料理を提供し、「ジビエっておいしい」を伝えたい!

A plus!で並ぶメニューには、気軽に楽しめる前菜、メインとなる料理もたくさんの種類が名を連ねていますが、何よりも特徴的なのはジビエ料理です。

ジビエとは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉や料理を意味する言葉(フランス語)で、シカ、イノシシなど狩猟の対象となり食用とする野生鳥獣、又はその肉のことを言います。ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。

日本ではオオカミが絶滅したことと気候変動の影響により山の生態系が崩れているといわれており、さらに山の餌がなくなったことで、野生鳥獣が街へ餌を探しに降りてきてしまうようになったといいます。地方の人口減少に伴い農業人口も減るなかで、野生鳥獣の農作物被害は深刻な問題になっています。実際に、野生鳥獣による農作物被害金額は約158億円で前年度に比べ約2千万円増加(対前年0.2%増)しているといいます。

また、有害鳥獣についてはさらに課題があると久米さんは話します。

「ジビエとして利活用されるためには処理工程の基準が非常に厳しいのです。有害鳥獣駆除として捕獲されても、全てが利活用できていません。未だジビエは肉が臭そう、堅そう、おいしくなさそうというイメージをもたれている方もいらっしゃるので、マイナスなイメージを払拭したいと思っております。ジビエは余すことなく食べることができますし、栄養満点*1。狩猟期間のジビエは脂がのっていて本当においしいんですよ。」

*1 ジビエ利活用に関する資料https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/jibie/attach/pdf/index-7.pdf

開業当初から、ジビエ料理も提供すると決めていた久米さん。海外では、古くからジビエ料理が当たり前に提供されているものの、日本ではまだまだと感じていたそう。そこで久米さんがこだわったのはジビエの仕入れ先。

「お客さまにはA plus!に来て安心して安全な料理を食べてもらいたいです。なので、仕入先を訪問してジビエがどのように扱われているかを自分の目で確認しています。こだわりをもってジビエを扱う方からジビエを仕入れることで、その街のジビエブランドを確立させることもできると思いますし、それが街おこしにもつながると感じます。そして、そうした仕入れ方をすることで取引先を応援したいと思うのです。」

居合わせた常連客のAさんは久米さんのお店に月1回は来店されるそうで、「こうした想いを持たれている久米さんのお店で、おいしいジビエ料理を捨てず残さず食べてあげることは、彼らの命に対する感謝ができる機会だ。」と話していました。

ジビエ料理ってどんなもの?もっと詳しく見てみよう

実際のジビエ料理はどういう風に提供されているのでしょうか。詳しく見せてもらいました。メニューは、その日の仕入れ状況や季節によって異なりますが、今回は仕入れたばかりのジビエを使ったメニューをご紹介します。想像とは違った料理の数々に驚くばかりです。

鹿肉の生ハムと柿のサラダ

鹿肉は赤身。さっぱりしています。柿とクリームのタルタルソースを一緒に食べることで、じゅんわりした食感と甘みが感じられます。久米さんのご実家で採れた旬の野菜と一緒にいただきます。

鹿もも肉のロースト~心臓とタンのコンフィ添え~

ローストしたもも肉だけでなく、心臓とタンも添えられています。どの部位もまったく臭みが感じられません。食感が固いのかなという想像に反して、柔らかな弾力が感じられたのが印象的でした。

鹿肉の煮込み

じっくり煮込まれて細部にまでしっかり味が浸透したお肉は、口の中でほろほろとこぼれるような柔らかさ。思わずびっくりしてしまうほどでした。

鹿肉カレー

カレーは久米さん独自のスパイス調合で、程よいスパイスと辛さを感じられます!鹿の骨、レバー、焼く煮る等で使われなかった細切れ部位、鹿の筋をカレーに入れているそう。どの部位も余すことなくおいしくいただけるのが素敵ですね。

久米さんが今感じることと、私たちにできること

どんな質問にもニコニコと答えてくださる久米さん。それまで全く料理に興味がなかった大学時代に、求人募集の「食」に目をつけ「楽しそうだ!」と感じて応募したといいます。調理・サービス(ソムリエ)のどちらの世界でも修業をして独立されて8年。今感じること、これからのことをお聞きしました。

「開業してから、支えて下さる周囲の方たちへ、より一層感謝を感じております。もっとお店を大きくというより、“今”を大切にしたいと思いますね。そして、来て下さるお客様たちが楽しんでA plus!(またね!)と言ってくれるお店であり続けたいです。」と語ります。そして、私たちに向けては「もしも、今何か迷っていることがあったら、絶対にやってみたほうがいい!やってみたら何か新しい道が見つかるかもしれない。見つからなくても、新たな気づきも必ずあるはずです。」と語ってくれました。久米さんから出てくる言葉は常に前向きで、思わず気持ちが明るくなりますね。

A plus!の店舗情報

素敵なお話をしてくださった久米さん。ワンオペ営業なので、事前予約は必須です。

店名:A plus!(アプリュス)
住所:神奈川県横浜市青葉区しらとり台34-5カーサ野路
電話番号:045-530-5489
営業時間:18時~22時(ラストオーダー)
定休日:月曜日、火曜日

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は、安心で安全な料理をおいしくいただけるお店A plus!の久米さんにお話をお伺いしました。ジビエ料理に、「臭いがありそう、堅そう、おいしくなさそう」のイメージがありましたが、久米さんが提供される料理を通じて、ジビエに対するイメージが一新されました。また、久米さんのパワフルで爽快、明るいお人柄と技術は、生産者と食べる人をつなぎ、料理をよりおいしくしていて「また来たい!アプリュス!」と思わせてくれるそんなお店でした。

捕獲した動物を、無駄なく最後まで食べることができるジビエ料理。美味しく食べることを通して農作物への被害削減ができるって素敵ですよね。今回の取材記事を通して皆さんのジビエに対する印象が少しでも変わっていたら嬉しいです。そして、残念ながら久米さんのお店には遠いという方も、近くのジビエ料理を提供しているお店をぜひ探してみてくださいね。

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