コーヒーが飲めなくなる??コーヒー2050年問題と私たちができることとは
日々当たり前のように飲んでいるコーヒー。最近ではカフェだけでなく、コンビニでも挽きたてのコーヒーがお手頃価格で飲めるようになりましたね。全日本コーヒー協会「コーヒーの需要動向に関する基本調査」によると、日本のコーヒー飲用状況は、1人につき一週間当たり約12杯とあり、一日にすると2杯弱飲んでいる計算です。かくいう筆者も、取引先へ伺うとコーヒーをいただく機会が多いため、当たり前のように飲んでいます。
(全日本コーヒー協会「コーヒーの需要動向に関する基本調査」日本のコーヒーの飲用状況)
そんなコーヒーが、将来飲めなくなる?!そのような問題がある事を、みなさんはご存知でしょうか。
コーヒー2050年問題とは……?
コーヒー2050年問題とは、地球温暖化による気候変動でコーヒーの栽培地が減少する恐れがあるという問題のことです。コーヒーの栽培には、年間の平均気温が20℃前後の地域が適しており、現在はコーヒーベルトと呼ばれる赤道を中心とした熱帯地方で栽培が行われています。
しかし、気候変動による温度上昇の影響で、2050年までに、コロンビア、エチオピア、ケニア、インドネシア地域のうち、3分の1の地域がコーヒー栽培に適さなくなると予想されているのです。
また、世界で最も収穫されているアラビカ種栽培地域のブラジル、インド、ニカラグアにおいては、2050年までに約80%の地域がコーヒーの栽培に適さなくなるとされています。
上図は、World Coffee Researchによる、栽培可能地域の変化を予測したものです。色が付いているエリアは、栽培可能地域を表していますが、現在を表す左図より、2050年を表す右図の方が減っていることが分かります。
(World Coffee Research Multiclass Classification of Agro-Ecological Zones for Arabica Coffee)
さらには、気候変動による気温や湿度の上昇は「さび病」の原因となります。「さび病」とはカビの一種である「さび病菌」に感染することで引き起こされる病気です。コーヒーの葉を落とさせて木を枯らしてしまう深刻な病気で、このさび病の影響によりコーヒー生産量も減ってしまうのです。
コーヒーの生産量が低下することで、コーヒー農家の収入も減り、貧困化が加速する恐れもあります。現在、推定2500万人の小規模農家が世界のコーヒーを生産していますが、彼らはコーヒーの1ポンド(453.6g)あたり、販売額の10%未満しか収入を得られていません。
ほとんどのコーヒー農家が、十分な食料を得るための収入がなく、コーヒーの収穫量が少ない場合や市場価格が低い場合に備える貯蓄、代替の収入源がない中で働いているのです。
このように、気候変動やコーヒー農家の貧困は、生産者自体を減少させ販売価格の高騰に繋がります。このままでは、コーヒーは「お手頃価格の飲み物」ではなくなってしまうのです。
将来もコーヒーを飲み続けられるよう、様々な企業が取り組みを行っています。例えば、スターバックスは、気候変動への対応策として、病害虫に耐えうる品種開発や、小規模農家が高品質で効率よいコーヒー栽培が可能となる研究を日々行い、コーヒー豆の安定調達に向けた取り組みを進めています。
まずは毎日飲むコーヒーの選び方から。私たちにできるアクションとは?
品種改良や農地の改善といった取り組みなどがなされている一方で、私たちにも普段からできるアクションがあります。中でも今回は、コーヒーを選ぶ際に意識できることについてご紹介します。
社会と地球にフレンドリー サステナブルコーヒーのチョイス!
「アグロフォレストリー」で栽培されたコーヒーを選ぶ
みなさんは、環境にやさしい農法「アグロフォレストリー」をご存知でしょうか?これは、農業と林業を掛け合わせた農法のことで、樹木を植え、管理しながら、その間の土地で農業を行うのが特徴です。
そんなアグロフォレストリーでコーヒーを栽培し販売しているのが、HIRO COFFEEです。具体的には、直射日光に弱いコーヒーの木を守るべく、日陰を作るために高い樹木(シェードツリー:Shade tree)と一緒に栽培することで、日焼け・霜焼けを防いでいます。
シェードツリーと一緒にコーヒーを植えることによって、木の落ち葉による栄養などの恩恵が受けられるため、プランテーション栽培に比べ化学肥料の使用を抑えることができるのも特徴です。
(商品名:オーガニック メキシコ)
(HIRO COFFEE オンラインストア)
オーガニックコーヒーを選ぶ
オーガニックコーヒーとは、国際機関であるOCIA(国際有機農作物改良協会)や、アメリカの機関USDA(オーガニック認定全米統一基準)などで認定されたものを指します。
無印良品では「過去3年以上殺虫剤や除草剤、化学肥料などを使用していない土壌で栽培していること」「豆の焙煎をはじめ加工段階においても添加物、加工補助剤などを使用していないこと」という2つの条件を満たした、人にも環境にもやさしいオーガニックコーヒーを販売。
この商品はカフェインレス(カフェイン97%カット)のため、カフェインが苦手な方や、夜眠る前にもコーヒーを楽しみたい方にもピッタリですね。
(商品名:カフェインレスドリップ)
(無印良品 オンラインストア)
フェアトレードコーヒーを選ぶ
フェアトレードコーヒーとは、社会的、環境的、経済的基準について定めた国際フェアトレード基準を満たしているコーヒーを表しています。生産者の持続可能な生産と、生活を支えるために必要な「フェアトレード最低価格」が定められており、国際市場価格がどんなに下落しても、輸入業者は「フェアトレード最低価格」以上を生産者組合に保証しなければいけません。
フェアトレード製品を購入することは、小規模生産者と労働者の生活とコミュニティを改善することにつながることにもなるのです。
小川珈琲では、「国際フェアトレード認証」の証である、黄緑色・水色・黒色のラベルが付いたフェアトレードコーヒーを販売しています。
(商品名:小川珈琲店 有機珈琲 フェアトレードモカブレンド ドリップコーヒー)
(フェアトレードジャパン)
(小川珈琲 オンラインショップ)
日本でコーヒーの栽培が可能?国産コーヒーという選択肢
持続可能な調達を実現する方法として、「病害虫に強い」品種の開発や、気候変動の影響に強くするための品種改良などがありますが、加えて調達先を多様化するという取り組みも行われています。
現在の日本は、コーヒーの99%を輸入品に頼っている状況。ですが、裏を返すと1%は国内で生産されていることになります。
以下では、そんな国産コーヒーを栽培する2つの会社を紹介します。
国産コーヒーの始まり ~Nose's Farm Garden(東京都)~
1878年(明治11年)に、小笠原で初めてコーヒーの試験栽培を行ったのが国産コーヒーの始まりで、現在も小笠原コーヒーとして栽培されています。小笠原コーヒーは無農薬にこだわり、ほとんどが手作業で手間暇をかけた希少なコーヒーです。そのため、生産者「Nose's Farm Garden」のコーヒーツアーでの提供や、限られた店舗でのみ販売を行っています。
(野瀬ファームHP)
1%の国内生産をビジネスチャンスと捉えた ~やまこうファーム(岡山県)~
コーヒーの99%を輸入に頼っている状況を、魅力的な市場ととらえた「やまこうファーム (岡山県)」は、自社の温室ハウスで本州初となるコーヒー栽培に成功しました。
皆さんに安心して飲んでもらいたい想いで、有機栽培、農薬を使わずに栽培されたコーヒー。
創業者の山本さんは、「国内での栽培が難しく、国産のコーヒーがほぼ作られていないこと」と、「日本のコーヒーを作ってみたいというチャレンジ意欲が湧いてきたこと」から、コーヒー栽培を決意したそうです。
また、一般の消費者にも国産コーヒーの苗木を栽培できる制度(JAPAN COFFEE PROJECT)を開始し、「Myコーヒーの木」をもつ楽しみ方を提案することで、国産コーヒーの普及につなげています。
おわりに
いかがでしたか?「コーヒー2050年問題」というとどこか遠い世界の話に感じられますが、「日々飲んでいるコーヒーが飲めなくなる問題」と考えると他人事ではなくなりますよね。
将来もおいしいコーヒーを飲み続けるために、いつも飲んでいるコーヒーを、サステナブルコーヒーに変えてみたり……
皆さんができることから始めてみませんか。