31cm、ヘアドネーションをしたいと思った時に読んでほしい話。
定期的に美容院へ行き、髪を切ったり、髪の色を変えたり、イメージチェンジをすることは楽しいですよね。一方で、病気や治療の影響で頭髪に悩みを抱える方が存在しているのも事実です。そういった方々に対して、自らの髪の毛を寄付し、医療用ウィッグとしておしゃれを楽しんでもらえる「ヘアドネーション(髪の毛の寄付)」という仕組みがあることをご存知でしょうか。
そもそもヘアドネーションとは
ヘアドネーションとは、切った髪を寄付し、脱毛症やがん治療の影響、事故などで、髪に悩みを抱える人のためのウィッグ(かつら)に役立てるという活動です。
医療用のウィッグには、人毛、人工毛、ミックス毛があります。人毛は、人の髪の毛をウィッグ用に特殊加工した毛材といわれることが多く、自然な光沢や、優しい肌触りが特徴です。高価なものが多いですが、トリートメントや傷んだ毛先のカットなど、正しく手入れをすれば長く使用できます。人工毛は、合成繊維の毛材で、軽くてお手入れが楽です。安価なものが多く、カラーバリエーションやデザインも豊富。ただし、使用できる期間は人毛と比較すると 短めです。ミックス毛は、人毛と人工毛を組み合わせたものです。混合の比率によっては、質感や見た目、値段に差がありますが、日常使いに向いてると感じる人も多いかもしれません。
日本のヘアドネーションを知る
日本では切った髪の毛の寄付を受け付ける団体があります。
Japan Hair Donation & Charity(JHD&C・通称ジャーダック)のほか、NPO法人HERO、株式会社グローウィング つな髪という団体があります*。この3団体では、ヘアドネーションを受け付け、髪に悩みを持つ18歳以下の子供たちに、医療用ウィッグを製作し、無償提供しています。
*団体によって寄付できる髪の条件が異なります。
団体には毎日ヘアドネーションが届いており、JHD&CのWEBサイトで公表されている寄付件数によると、1日に全国から300~500件届くそうです。
JHD&C(週に2000件、月に8000件、年に約10万件)
数を聞くと毎日大量の髪の毛が届いていて、医療用ウィッグは足りているのではないかと思った方もいるかもしれません。しかし、JHD&Cだけでも医療用ウィッグの待機人数は191人です*。なぜでしょうか。
*2023年3月28日時点の人数です。
寄付された髪の束には、様々な長さの髪の毛が入っています。そのため、ウィッグの長さにもよりますが1体に約30人~50人分の髪が必要となります。また、ドナーへのウィッグの提供にかかわる作業はボランティア等で行っているため、時間がかかってしまうというのです。
さらに、市販のウィッグはほぼ大人のものばかりとなっており、子供用は流通が少なく選択肢があまりありません。そのため子供用ウィッグはフルオーダーやセミオーダーになることが多く、費用も高額になりがちです。成長に合わせてウィッグを作成することを考えると、費用は大きな問題となることがわかります。
ウィッグを無償提供してくれる団体の皆さんの存在って、子供たちやその親御さんにとってかけがえのない大きな存在ですね。
実際にヘアドネーションをやってみた!
実際に筆者がヘアドネーションを行ったことを、レポートして振り返っていきます。
なぜヘアドネーションをしようと思ったのか
「少しでも誰かの役に立ちたい」と思ったからです。筆者がヘアドネーションの存在を知ったのは、数年前に一緒の職場だった先輩が、ある日突然腰まであった髪の毛を切り、ヘアドネーションをしたと聞いたときでした。その時切るか悩んでいた髪を誰かの役に立てるのであれば自分も伸ばしてみようと思ったのです。
そう決意したものの、髪を伸ばすことは思った以上に大変でした。個人差はありますが、髪の毛はだいたい毎月約1センチ伸びるといわれています。計算上1年で12センチしか伸びません。また、髪をきれいに伸ばそうと思うと、途中で美容院に行って傷んだ部分を切る必要があるので、そう順調には伸びませんでした。途中で何回も切りたい衝動にかられます。それでも「自分の髪の毛が、誰かの役に立つなら」という想いは消えず、3年間伸ばし続けました。
ヘアドネーションの方法
ドネーションカットは、寄付する髪を受け付ける団体の理念に共感する理美容室でのカット、行きつけの理美容室でカット、自分でカットするという方法があります。各団体の理念に共感する理美容室ではドネーションカットの知識や経験があります。バッサリ髪を切ることに不安を感じる場合は、こういった理美容室でしっかり話をしながら切ることもいいですね。
筆者はいつもお世話になっている美容室でドネーションカットしました。もじもじしながら「ヘアドネーションしたい」というと、担当の美容師さんも初めてだったそうで、一緒に「31センチの長さ」、「髪の束の太さ」を確認しながらカットしました。
ドナーシートと髪の毛を一緒に送付します。送付する際は、追跡機能があるほうがよいです。
JHD&Cへ寄付すると、発送時の追跡番号を入力してルーレットを回すことが可能。たくさんの「Thank You」イラストの中から好きなものをダウンロードすることができるということです。
注意するべきこと
・ドネーションカットは31センチ以上必要です。
・乾いた髪でないといけません(カットするときに濡らしてはいけない)
・送付する際は、ラップやホイルで巻かず、髪束をばらさずビニールに入れます。
・カラーリングやパーマをしていたり、白髪・くせ毛といった方でもヘアドネーションに参加できますが、このあたりの条件は各団体によって異なるため注意が必要です。
髪を伸ばす事が難しい人でもできること
何年も髪を切らずに伸ばすことが難しい方でもできるアクションがあります。
チャリティファンディング
返礼品付きの募金のことを言います。オリジナルシャンプーやオリジナルタオル、ハンカチなど募金した金額に合わせて、返礼品を選ぶことができます。デザインがかわいく、チャリティしながらかわいいグッズをもらえるとは素敵ですよね。
書籍を読み、ヘアドネーションの今を知る
ヘアドネーションに関する書籍も出版されています。ヘアドネーションをすることができなくても、書籍から新しい視点を得ることもアクションの一つ。
・31cm~ヘアドネーションの今を伝え、未来につなぐ~
ウィッグを受け取る人、ドナー、美容師、医療者、団体の方へのインタビューがまとまった本。 ヘアドネーションに関する様々な人の観点で語られるお話からは、さまざまな想いが感じられます。実際にウィッグを受け取った方の想いを聞くと、自分にはわからなかった髪の毛に対する想いを知ることができ視野を広げることができました。そして、ヘアドネーションをしてよかったと心の底から思いました。
・髪がつなぐ物語
小学生の女の子がヘアドネーションについて自ら調べ、実際に髪の毛を切りに行くという物語。この物語で登場する主人公の女の子と一緒にヘアドネーションの理解ができるので小学生高学年くらいから読み進められそうな一冊です。
おわりに
いかがでしたでしょうか?今回はヘアドネーションについて、筆者の実例を交えて紹介しました。
ヘアドネーションは、実際に寄付をするまでに長い準備の時間を要します。髪の毛のケアを怠れないですし、ときには、もう髪をきってしまいたいという衝動に駆られることもありました。ですが、病気等で療養している子が髪の毛でおしゃれを楽しむことで前向きな気持ちになれたり、気分転換できたり、暗い気持ちが少しでも和らぐかもしれない――そう考えると、髪を伸ばし続けることができたのです。
切るか、伸ばすか、だけでなく「切るために伸ばす」という選択肢が当たり前になる世の中になれば嬉しいなと思います。