5月8日から、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ「5類」へと移行することが発表されました。

マスクの着用は、すでに個人の判断が基本となっていますが、感染症対策として使われていたアクリル板についても、政府として一律に求めることはせず、事業者ごとに設置の要否を判断する、と言う考え方になるとのこと。このタイミングで撤去を検討する企業も多いのではないでしょうか。

いざ撤去を検討する際に困るのは撤去したアクリル板をどうするのか、ということ。処分するしかないのか、もったいない......と感じている方もいるかもしれないですよね。そこで今回は、アクリル板の撤去を検討する際に読んでほしい、アクリル板の活用方法をご紹介いたします。

アクリルってどんなもの？能力をおさらい

まずは、アクリル自体がどんなことに秀でている素材なのか、再確認してみましょう。

アクリルの特徴1：透明性が高い

ガラスよりも高い可視光線透過率を持ち、全般的に透明性が高いプラスチックの中でもトップクラスです。その透明性の高さから「プラスチックの女王」とも呼ばれています。

アクリルの特徴2：耐候性が高い

耐候性とは、日光や雨等の天候がもたらす要因に対する耐久性のことで、紫外線に強く、風雨にも長期間耐えられるため、アクリルを野外でも使用しても劣化しにくいそうです。

アクリルの特徴3：耐衝撃性が高い

耐衝撃性とは、外部からの受けた衝撃に対しての耐久性のことで、アクリル板は通常のガラスの10〜16倍です。割れたとしてもガラスのように飛散しない点では、安全面で優れています。

アクリルの特徴4：加工しやすい

アクリルはさまざまな加工ができ、切断や切削、穴あけ、接着も可能です。

以上の特徴から、アクリルは美ら海水族館の巨大水槽や、車のヘッドランプやテールランプ、計器板のカバー、光学レンズ、電飾看板のカバー、推し活で人気のアクリルスタンドなど多様な用途で活用されています。

その手があったか！アクリル板の新たな活用例

さまざまな特徴があるアクリルは、現在の日本ではリサイクルのスキームが整っておらず、海外へ輸出もしくは埋め立てや焼却処分されています。しかし、使われなくなったアクリルなどを生かして、新しい価値を生み出そうという動きが出てきています。

■推し活×アクリルリサイクル

神田明神アクリルグッズ感謝祭

こちらは、三菱ケミカル株式会社、ローランド ディー.ジー.株式会社などが発起人となり昨年立ち上げられた「アクリルグッズ等再生利用促進協議会」によるイベント。

推し活で欠かせないものとなったアクリルキーホルダーやアクリルスタンドなどのアクリルグッズを回収し、三菱ケミカルが行うリサイクルアクリル板を作る試験に使われるとのことです。

■生活雑貨製品・ワークショップ

有限会社三幸

アップサイクルでキーホルダーを製作している企業もあります。有限会社三幸では、自社製品を生産する過程で出てしまうアクリルのスクラップを粉砕し、新たにプレミアムアクリルとしてパスケースなどを生産・販売しています。またアクリルの端材を生かしたワークショップを開催するなど体験型の啓蒙活動も行っています。

■ジュエリー

shitsurae

日新火災withCaNdayでも一度取り上げさせていただいた“shitsurae”（シツラエ）は、アクリル板のほか、木、紙、布、コーヒー豆、海洋プラスチックなどの廃材を組み合わせたジュエリーブランド。
素材の良さを生かすため着色等はせず、1点もののジュエリーを製作しているブランドです。

実際にアクリルはどうやって回収するのか

ここまで、さまざまな活用方法を見てきましたが、いざアクリル板を回収してほしいとなったとき、どのような回収サービスがあるのでしょうか。私たちが身近に利用できそうな回収サービスをご紹介します。

緑川化成工業株式会社

https://www.midorikawa.co.jp/index.htm

緑川化成工業株式会社は、国内初の再生アクリルプレート「リアライト」を取り扱っている会社。エコマークも取得していて、提携先の企業から排出されるアクリル成型品の廃材を使用しているといいます。

「飛沫防止パネル引き取りキャンペーン」を行っていて、申込フォームにアクリル板のサイズなどを入力し応募します。その後担当者から連絡が来て打ち合わせ後、回収しに来てくれるとのこと。

いずも和紙

書道用品専門店「いずも和紙」では、不要になったアクリル板をなんと買い取ってくれるそうです。傷がなければ、1kg 20円で買い取ってもらえます。
買い取ったアクリル板は、書道作品の額に使われるとのことです。

おわりに

いかがでしたでしょうか？調べれば調べる程、アクリル板ってすごい能力を持っていて、処分するにはもったいないのではと感じます。新しい生活様式に移行するタイミングで、限りある資源を無駄にせずに、環境に少しでも良いアクションとして是非選択肢の1つに取り入れてみてくださいね。

【参考】
・厚生労働省「マスクの着用について」
・厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の 基本的感染対策の考え方について」
・BUSINESS INSIDER「プラスチックリサイクルの環境負荷低減のカギは電子レンジ？ ｢脱炭素｣への一手となるか」
・荒川技研「アクリル樹脂の特徴や用途を知ろう！ 他の樹脂素材より優れている点とは？」
・PlaBase「PMMA（アクリル樹脂）とは？ - プラスチック・樹脂の成形材料DB」
・モノタロウ「5-10 アクリル樹脂（PMMA,アクリル繊維、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル）」
・acry-ya「アクリルの特性と種類」
・アクリルグッズ等再生利用促進協議会「アクリルグッズをリサイクルする“推し×SDGｓ”活動｜第1弾イベントアクリルグッズ感謝祭in神田明神を3/30開催」
・テレ朝news「【5月からコロナ5類移行】飛沫防止のアクリル回収とリサイクル呼びかけ」
・Plastic Smart「アクリルアップサイクル」
・miyuki acryl「(有)三幸は持続可能な開発目標（SDGs）を支援しています」