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【前編】洋服を買う時の選択肢に。『Enter the E』植月さんから教わる、エシカルファッション

皆さんはエシカルファッションのアイテムを探したり、購入したことがありますか?「どこで売ってるのかわからない!」「エシカルを謳っているけど、本当?」そんなモヤモヤを抱えている人にオススメなのは、エシカルファッションのセレクトショップ『Enter the E(エンター ジ イー)』。
今回は『Enter the E』代表の植月友美(うえつき ともみ)さんにインタビュー。エシカルファッションに興味を持ったきっかけや『Enter the E』がどんな想いで展開されているのかお話を聞いてきました。前編・後編の2本立てでお送りいたします。

植月さんとファッションのあゆみ

植月さんは、お祖父さんが洋品店を営んでいたことから、小さな頃からファッションが身近な存在だったそう。自分で初めて洋服をデザインしたのは、なんと小学4年生の時!当時、植月さんは早くも自分の将来について考えていたようです。

「祖父母や両親の影響もあり、小さい頃から将来は自分もきっと洋服に関わる商売をやるんだろうと漠然と思っていました。将来を決める時、『将来ビジネスをやるなら、早く経験を積んだ方がいい!』と考え、高校卒業後はセレクトショップに就職。しかし、大卒以上でなければ希望していたバイヤーができないと知り、古着屋に転職しました。勤めていた古着屋では毎日6トンくらいの中から洋服をピックする仕事をしていて、当時は宝探し気分で、楽しくて仕方なかったです。

ただ、『自分にとって悪くない経験だけど、これだけで終わっていいのかな?』という想いもありました。また、ファッションを全体的に俯瞰できるかと言われるとそうではないと感じたこと、海外の洋服の買い付けに憧れがあったことから、一気に方向転換!『グローバルなビジネスを学びたい。世界全体のファッションを見てから、自分がやる商売を決めよう!』とNYへ行きました。」

「これから」という時に見つかった、病気

「海外であればファッションを俯瞰しながらキャリア形成できる」と考えた植月さんはNYへ。約4年間勉強し、ラグジュアリーシューズのブランドに就職が決まりました。

「そんな中、膀胱炎のような症状が出たため、病院に行きました。そして後日、病院から『癌の疑いがある』と手紙が届いたんです。子宮頸の病気で、レベルが高いほうだから早く観察したい、と言われました。まさに、ここからキャリアを築いていく、というところだったのに……。」

その後、植月さんは経過観察のため日本に帰国。「海外で学んだ経験を活かしたい」という想いを抱え、中途採用で商品企画の仕事に就いたものの、ご自身の経験を活かせることがあまりなかったようです。そのストレスに加え、癌になってから抱くようになった「思いっきり人生を楽しんでから死にたい」という気持ちから、もらったお給料を全て洋服につぎ込むように。しかし、結果的に植月さんに残ったのは大量の借金と後悔でした。

そんな時、ご家族から「何をやってもいいけど、人に迷惑をかけることはやめなさい。」と言われたことを思い出し、植月さんの心は大きく動きます。

「それまで、ファッションって中毒性はあるけれど、人には迷惑をかけない、自分だけの楽しみだと思っていました。しかし、借金をすることで人に迷惑をかけてしまった。初めて心の底から、自分だけのために生きる虚しさを感じ、『何のために生きてるんだろう?』と自分に問いました。そして、『どうせ死ぬんだから、誰かの役に立ってから死にたい』と思うようになったんです。」

Enter the E 店内の写真(提供:植月さん)

植月さんの人生を変えた、1つの動画

“誰かの役に立ちたい。”
そう思った植月さんは、好きな服で社会のために役に立てることを探すため、ファッションの問題などを調べ始めました。そこで、とある動画に出会ったそう。

「洋服の素材となる綿花を作る時に使われる枯れ葉剤の動画です。農薬の影響で農家さんの肌がただれていたり、家から出られなくなってしまっていたり……。そんな映像を見て、自分の好きなものがこんな風に作られていたのかとショックを受けました。自分がやってしまったことに対する絶望、罪悪感。これはこのままのファッションを続けていたら大変だ、と思いました。」

この動画をきっかけに、植月さんはどうやったら誰にも迷惑をかけないでファッションなどを持続可能にできるのか、どうやったら社会を変えられるのか、と考え始めました。

「まず、服の生産背景を知らなかったことに気付きました。なぜ知らなかったのかというと、日本の洋服は自給率が2.7%しかないからです。例えば、お米は日本で育てるから、その背景などを知ることができますよね。ですが、服の素材となる綿花の場合は、日本ではなく、トルコやインドといった遠い土地の農園で育てられている。自分の国で自分の着るものを育てない・作らないから、私たちは何も知らなかったんだ、と思いました。

それであれば、と思いついたのが、自分で着るものを自分で育てて作るというビジネス。これを私は『自産自着』と呼んでいます。私は2009年から自産自着を広げるツアーを始めました。」

変わりだした、時代と社会

日本には、使われていない耕作放棄地があり、それが環境破壊に繋がるとも言われていました。そんな耕作放棄地を使ってオーガニックコットンを育てれば、「雇用も増えるし自給率も上がる!何より楽しい!」そう考えた植月さんは、 当時働いていた会社で新規事業として立ち上げる提案をしたり、出資を求めるために当時貸農園を経営している会社さんに声をかけたりと、様々な働きかけをしましたが、全く融資してもらえなかったそう。

「当時のビジネスは、利益は“自分(会社)のため”というものでした。その後、2011年に東日本大震災が起こったことで、徐々に応援消費や気候変動、SDGsに対応する動きが生まれ、少しずつ『誰かのために役に立つことをしよう』『自社だけでなく社会のためにも利益を出そう』といった空気ができあがってきたんです。しかし、ファッションに関してはエシカルやサステナブルへの関心は薄く、ビジネスはCSRの領域止まりで悔しい気持ちでした。

そんな中、2018年にグラミン銀行のムハマド・ユヌスさんが日本に来ていて、講義を聞く機会がありました。そこで『社会を変えるにはどんな素質が必要?』という質問に、ユヌスさんが『人はどんな境遇でも社会起業家になれる。社会を変えることができる!』と答えているのを聞いたんです。この一言で私の迷いは消え、社会を変えることを決意しました。そして、今後もずっと人類が洋服を着ている限り、みんなが幸せな社会にしたい。誰にも迷惑をかけず、地球にも人にも心地よいファッションをつくるために諦めかけていた自産自着のビジネスにももう一度チャレンジしようと決意しました。」

おわりに

前編では、植月さんがファッションに興味を持ったきっかけや『Enter the E』を立ち上げるまでの歩みについてお話しいただきました。
次回はインタビュー後半。『Enter the E』がどんな想いで展開されているのか、植月さんのモヤモヤなどを伺っています。更新をお楽しみに!

■店舗情報
店名:Enter the E(エンター ジ イー)
住所:東京都渋谷区渋谷2丁目24−1 渋谷スクランブルスクエア9F
営業時間:10:00~21:00

【参考文献】
★耕作放棄地について
内閣府「農地・耕作放棄地面積の推移」https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281114/shiryou1_2.pdf

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