【後編】工業地帯の海岸をもう一度豊かに。ウミガメを呼び戻す「楽しい」海岸清掃とは
前編では、四日市ウミガメ保存会の活動中心にお話を伺ってきました。後編では、株式会社ビーコードで保険代理店業に従事しながら、同団体の副会長を担う山田さん自身についてお聞きしていきます。
★前編はこちら
山田さんにとってのサステナブルって?
2011年からお子さんと一緒に活動できるボランティアとして“ウェルカメよっかいち”の海岸清掃に参加された山田さん。もう10年以上NPO法人四日市ウミガメ保存会でも活動されていますが、山田さんにとってのサステナブルってなんでしょうか。
「3R*の定着。ゴミをゴミとして扱わないようにアップサイクルの意識が大切だと感じているかな。”ウェルカメよっかいち”でもワークショップとして流木を使ってアート作品を作ってもらったり、アップサイクルしたり様々な形で楽しみながらリデュースしている」
*3R は Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのRの総称です。
そう語る山田さん自身も、楽しみながら企画を運営されている様子を感じられます。子供たちが楽しそうに参加しているのがとても印象的な企画。幼いころからこういった3Rの経験ができることは貴重な経験であり、財産だと感じます。
しかし、一方ですべての人がこういった経験をできるわけではありません。私たちがサステナビリティを自分ごととして捉えるには何が必要かお聞きします。
「まずは知ってもらうことだと思う。知らないことには何も始まらない。人って知らないことについては、関心が持てないんですよ。海岸清掃では特にマイクロプラスチック問題が中心になります。本当に他人事じゃなくて、生き物たちが実際に取り込んでしまっているんです。そういった問題を知った人が、どんな些細なアクションにでもつながればいいと感じる」山田さんは続けます。
「あとは精神的な豊かさ。生きていくのに一生懸命な時代ってみんなゴミを捨てる側だったんです。でも今、日本でも環境問題が取り上げられ、関心を持たれるようになった。それは日本が経済的に発展し、豊かになったからだと思う。途上国ではまだ考えられる状況じゃない。だからみんながもっと経済的にも豊かになれば、精神的な余裕が生まれ……そうするとボランティア活動したいという気持ちが芽生えたり、環境問題にも取り組もうと思えるんじゃないかな」
山田さんに聞く、私達が普段の生活でできそうなこととは
サステナブルなアクションを起こしている山田さんも、時々他の人にその重要性を伝える難しさを感じることがあるようです。そんなモヤモヤへの向き合い方はどうしているのでしょうか。
「基本的に人は動かせないし、強制できないと思っています。だから、自分自身がコントロールできることに集中しています。誰かに何かをやってくれと言うのではなく、自分自身が行動を変えることで相手の人が自発的に動くようになるんです。もしダメだったら、やってくれない人にストレスを感じるのではなく、自分のアプローチ方法(やり方)が悪かったと感じられるようになるので、この方法だとストレスを感じないんです」
誰しも日常生活でついつい他人のせいにしてしまいそうになることがあるかもしれません。山田さんの考え方をすぐに真似することは難しいかもしれませんが、相手に自発的になってもらうために、自分自身が変わるという言葉もすごく素敵ですよね。
最後に、日新火災withCaNdayの読者へむけてメッセージをいただきました。
「何かしたい事に対するアンテナをはることが大切!そうすると情報が手に入る。もしボランティアに興味がある人だったら、例えば四日市ウミガメ保存会の活動は、比較的参加のハードルが低いボランティア。参加することでボランティアがどういうものか気づくことができると思う。あとは、どんなボランティアに参加しても決して無理をしないように」
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、NPO法人四日市ウミガメ保存会の活動や、同団体で活動される山田さん自身のお話をお届けしました。これからも毎月第1日曜には“ウェルカメよっかいち”が実施されます。今後この活動が続かなければ、山田さんが仰る“豊かな海”“豊かな海岸”で人間と生物たちが共生していくことは難しいかもしれません。だからこそ、「頑張りすぎないように、続けること」の大切さを教えてもらったと感じます。
サステナブルを意識した生活ってハードルも高く難しいかもしれません。そんなときは「頑張りすぎないように」肩肘はらずに取り組むほうが続けられるのかもしれないですね。
【参考文献】
・リデュース・リユース・リサイクル推進協議会「3Rについて」
・YOU Yokkaichi「四日市市の吉崎海岸、国際的にも登録される「自然共生サイト」のひとつに認定、環境省が発表」
・四日市「令和05年10月06日 記者発表資料 自然共生サイト「吉崎海岸」の認定について」