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障がいを持つ人の視点にどう気づく?視点を追体験する方法を紹介

東京2020オリンピックパラリンピック大会が終了して、1年が経過しました。義足で走るランナーや目の見えない方が泳ぐ姿など、“パラスポーツ”や“パラアスリート”を目にする機会を通じて障がいを理解したいという思いを持った人も多いのではないでしょうか。

「変化は、気づきから始まります。」

東京2020パラリンピック閉会式で橋本会長が話した言葉の一つです。「障がいに気づく」とは、視覚障がい者の人が白杖を持っていたり、下肢が不自由な人が車いすに乗っていたりといったわかりやすい障がいに留まりません。障がいを持つ人の目に見えない困りごとへの気づきこそが、「変化」をもたらす気づきや、障がいに関わらず多様な価値観を受け入れようとする姿勢の獲得にもつながります。
今回は、そんな障がいを持つ人の視点に立つことで得られる気づきや知識をもたらしてくれる体験についてご紹介していきます。
(※今回ご紹介するのは筆者が独自に選んだトピックであり、その障がいを持つ方の代表的な視点を表すものではありません。)

障がいを持つ人の視点に立つことで気づけること

パラリンピックから見る、スポーツと知的障がいの関係

障がいを持つアスリートの祭典、パラリンピックですが、抱えている障がいによって参加へのハードルが変わるのをご存じでしょうか。パラリンピックに出場したアスリートの大半は肢体不自由や視覚障がいといった身体障がいを持つ人々で、実は、知的障がい者の参加割合は3%程度だといいます。これは、知的障がいの場合、障がいを判定する基準やその障がいがもたらすスポーツへの影響判断が難しいとされているためです。

知的障がい者の競技会参加へのハードルが課題となるなか、彼らに挑戦の機会を提供している組織もあります。それが「スペシャルオリンピックス」です。彼らは、知的障がい者を中心に、様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を提供し続けています。

「スポーツをもっとインクルーシブなものにするにはどうすればいいのか?」――障がいについての新たな知識を得たり、課題に取り組む組織について知ったりすることで、そんな新たな問いが生まれます。パラスポーツ観戦を楽しむのはもちろんのこと、一人ひとりがこうした問いに「気づく」ことが、誰もが過ごしやすい社会をつくる第一歩になるのかもしれません。

コロナ禍で気づく、表情と聴覚障がいの関係

コロナ禍で、常時着用するのが当たり前になった「マスク」。このマスクが、聴覚障がい者にとって不便となっているということをご存じでしょうか。実は、手話では手の動きだけではなく、口の動きや表情も大切な要素になっており、マスクで口元が隠れるとコミュニケーションが困難になってしまうのだそうです。こうした理由から、手話通訳者はマスクの代わりに透明のフェイスガードをすることで、聴覚障がい者への意思伝達を行っています。

マスクが新たな分断を生み出していることに気付くことで、私たちは「聴覚障がい者の方と話す場合にフェイスガードを使用しよう」「表情がわかるような方法をとろう」などのように行動に移せるようになります。まさに、「気づき」が行動の変化につながる好例だと言えるのではないでしょうか。

障がいを「自分ごと化」できる体験とは?

障がいに気づき、理解するには、手記やインタビュー動画を見るだけでなく、障がいを自ら追体験することで「自分ごと化」することも1つの方法です。記事の最後に、障がいを追体験できる3つの施設・キャンペーンをご紹介します。

視覚障がい者の世界を体験できる「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは、完全に光を遮断した“純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを子どもから大人までが楽しめるソーシャル・エンターテイメント。

ダイアログ・イン・ザ・ダークでは「アテンド」と呼ばれる視覚障がい者が館内を案内します。参加者たちはチームで真っ暗闇を進み、目が見えない世界を体感していきます。同じチームとなった初めて会う人たちとの対話をしなければ、前に進むことができません。
筆者はこの施設を体験したことがあります。視覚を奪われたことで、視覚障がい者の日常生活のなかでの不安、「段差があるよ」などの声をかけられることで真っ暗闇の世界から、まるで視界のようなイメージを持つことができ「言葉がもたらす安心感」に初めて気づくことができました。それから視覚障がい者の方を見かけたときは、点字ブロックの上に荷物を置かない、白杖の邪魔にならないようにしたり、まずは「お手伝いすることはありますか」と様子を見て声をかけたりするようになりました。

ディスレクシア(失読症・読み書き障がい)を持つ人の視点が再現されたサイト

欧米での発症率は人口の5-17%とも言われる「ディスレクシア(失読症・読み書き障がい)」。知的能力には異常がないものの、字の読み書きに困難がある学習障がいのことで、学習障がいの中では最も人口が多いです。もしかすると、あなたの身の回りにもディスレクシアの人がいるかもしれません。

ディスレクシア・カナダが運営する「読みにくいサイト」は、そんなディスレクシアの視点を追体験できるWEBサイトです。ページをスクロールしていくと、ディスレクシアの基本的な情報を学べるのと同時に、エフェクトによってディスレクシアの人の視点を疑似体験できます。例えばbとdのような似たアルファベットや難しい言葉遣い、画像がない文字だらけの記事は彼ら・彼女らを混乱させてしまうことがわかります。

見た目ではわかりにくく、ただ「読書が苦手」と言って済ませてきた人も多いと予想されるディスレクシア。ディスレクシアでなくてもミスを防ぐ、わかりやすい表現であった方がいいですよね。障がい者対応という言葉で片づけず、誰にとってもわかりやすい伝え方を意識したいものです。

車いす利用者が多数派の「バリアフルレストラン」

最後にご紹介するのは、車いす利用者が多数派となった世界を体験できる架空の空間「バリアフルレストラン」。2022年3月には神奈川県川崎市でイベントが開催されています。ここでは、車いす利用者がマジョリティであり、2足歩行の方が障がい者としての待遇を受けることになります。天井の高さが低く設定されていて、2足歩行の方にヘルメットが配られたり、スタッフに冷たくあしらわれたり、過剰に配慮されたり……現実世界で普段車いす利用者が経験し、感じる「あるある」から、逆転世界で参加者がマイノリティの立場に立つことで、社会の見えない偏りを知ることができます。

わかりやすい偏見だけでなく、車いす利用の方に「配慮する」という2足歩行の人々の視点は、無意識のうちに“二足で歩けることが当たり前の社会”を前提として、そうでない人を傷つけ・貶めているかもしれないことにハッとさせられる体験になりそうです。今後このコンセプトを体験できる場を作る予定だそうなので、ぜひ行ってみてください。

おわりに

いかがでしたでしょうか。「気づくことが変化へのきっかけになる」というテーマでしたが、マジョリティ・マイノリティの視点として二項対立で考えるのではなく、視点を変える体験を意識的に増やすことだけでも自然と考え方が変わるきっかけになります。

障がいを持つ人全ての視点を包含することは難しいでしょう。また一人で何か行動を起こすことも難しいかもしれません。しかし、自分ひとりではなく対話しながら一緒に考える機会をより多くの人と持つことが大切なのではないかと筆者は考えています。まずはその一歩として今回ご紹介したさまざまな方法で、新たな価値観を広げる体験をしてみてはいかがでしょうか?

【参考文献】
口元が見える「透明マスク」 聴覚障害者が手話唄で啓発
https://www.fukushishimbun.co.jp/topics/27135


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